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3DプリントでもPA11とPA12を使い分けるべきでしょうか?
3DプリントでもPA11とPA12を使い分けるべきでしょうか?

ポリアミド11(PA11)は、ナイロン11としても知られる、ひまし油を原料とする100%植物由来のプラスチックスです。PA11は、自動車部品、石油・ガス掘削用途、およびスポーツ用品をはじめとした各種産業で使用されていて、75年以上の歴史を有しています。
AM(Additive Manufacturing、付加製造)は、今や試作品にとどまらずSerial Production(量産部品生産)が隆盛となっています。試作品では、造形性が容易であることが主要なテーマでしたが、量産部品となりますと機械特性、連続生産性、設計の柔軟性、および素材のサステイナビリティ(持続可能性)がますます重要になり、PA11が注目されています。ここでは、PA11とPA12についての類似点と相違点を解説し、3DプリンティングにおけるPA11とPA12の優位性、特異性について、より詳細にご説明いたします。

AMは、複雑な形状やカスタマイズされた製品の製造における革新的な生産技術として急速に台頭しており、産業界での大規模な製造における、スピードと品質、コスト、信頼性の向上が期待されています。非常に過酷な環境でもPA11が発揮する性能には信頼があり、AMによる部品製造の原材料によく指定されています。PA11は、高い性能と耐久性を一貫して提供する、費用対効果に優れ、かつ環境にも優しい選択肢です。

PA11とPA12の類似点と相違点

化学的な視点では、PA11とPA12は非常によく似たポリマーです。ポリマー骨格のアミド結合間の炭素数が一つ違うだけです。しかし、この一つの炭素のつながりが異なるだけで、ポリマーの3次元構造に大きな違いをもたらすのです。どちらのポリマーも、選択的レーザー焼結(SLS)やMJF、SAFのような粉末床溶融結合法(PBF)で一般的なポリマーです。PA11とPA12はどちらも、耐薬品性に優れ、3Dプリンティングの解像度に優れ、造形後の未溶融パウダーの50%以上をリサイクルできます。

 

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PA12より耐久性のあるPA11

Rilsan® PA11は特有な結晶構造により、石油由来のPA12よりも機械特性に優れています。伸び性、衝撃強度、耐摩耗性、耐疲労性に優れ、特に低温(-40℃)環境において顕著な差が表れます。したがい、PA11は、プロトタイピング(試作品)ではなく、シリアル・プロダクションの部品製造の際に選択される傾向にあります。ところで一般的には部品のZ軸方向(積層方向)の強度がXY平面の強度より極めて低いことが問題となっています。しかし、PA11は、PA12よりも等方性に優れています。上記グラフにございますように、Z軸方向(破線)とXY平面(実線)がPA11では同等であり、この問題が解決できることを示しています。

設計の目標達成を容易にするPA11

AMはまだ比較的新しい生産技術ですが、設計者は新しい形状の製品を作り、サプライチェーンをシンプルにする可能性に期待を寄せています。PA11は、PA12を上回る機械特性の利点を生かすことで、設計者の目標達成を容易にします。例えば、PA11は優れた伸び性と耐疲労性を有するので、部品を薄肉に設計することができ、軽量で低コストの部品、廃棄物の削減、生産時間の短縮を達成できます。また、PA11の優れた耐衝撃性と耐摩耗性により、部品の耐用年数が長くなり、コストを削減し、その部品が組み込まれるシステムのダウンタイムの削減に貢献できます。

PA11の革新的な活用事例

PA11は、3Dプリンティングによる量産部品の検討黎明期から採用事例があります。3Dプリンティングにより造形されたPA11のエアダクトは、何十年もの間、航空機に使用されてきました。
 
最近では、ベアリングのメーカー、Bowman社がhp社のMJF技術を用いて新しいローラーベアリング(ころ軸受)のリテイナー(保持器)をPA11で造形しました。Bowman社のAMディレクターであるJacob Turner氏は、PA11を「よりグレードの高いエンジニアリング材料」であると高く評価し、射出成形で製造された同等部品と比較して最大5倍の耐荷重と部品寿命を向上させたことを挙げています。保持器を構成するいくつかの部品はクリップで留める構造で設計していたので、Bowman社はPA11の機械的特性と優れた破断伸びに特に期待していました。
 
SLS方式の産業用3Dプリンター企業のEOSは、有名な3Dプリンティング・サービス・プロバイダーのShapewaysと提携し、義肢装具やロボット部品、医療機器や工具などの用途にレーザー焼結(LS)技術でPA11を使用しています。

 

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植物由来のPA11による持続可能な3Dプリント

AMは、気候変動の問題に対して良い方向に働くとみなされて、ますます選択されるようになっています。特定の工場で集中して部品を生産し、二酸化炭素を多く排出するコンテナ船やトラックを使って世界各地に輸送するのではなく、企業はAMでサプライ・チェーン・ネットワークをデジタル化して、究極的なジャスト・イン・タイム、必要な部品を必要な場所で必要な時に生産することを模索しています。PA11は、ひまし油から作られる100%植物由来のプラスチックであり、PA11を選ぶことにより、環境に配慮する戦略と適合させることができ、ひいては企業の社会的責任(CSR)の目的の達成を促します。アルケマは、Pragatiプロジェクトの創設メンバーであり、同プロジェクトはインドでの持続可能なトウゴマ生産を目指しています。
 
高性能で持続可能な解決策で現状を改善することを目指す人々にとって、Rilsan® PA11には上記のユニークな特性があるので、3Dプリント部品の品質・耐久性とAMによる環境に優しい生産を両立する最良の選択肢として、PA11は位置づけられています。

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